YEC TOURING REPORT 伊豆下田 (第2話)
食後は136号線を南下してなまこ壁で有名な松崎市街を抜けると県道15号線に左折して伊豆半島の先端である石廊崎には向かわず、下田方面にショートカットした。松崎は随分昔の話になるが手前にある堂ケ島温泉に一泊でツーリングに来た際に、当時の常連の古参であった関根氏が峠で勝手にこけてハンドルで胸を強打して気胸になり、そのまま入院した西伊豆病院が松崎市街地に入る左手に見えた。いつ来てもその当時のことを思い出す。 時間があればこのまま直進して国道136号線を南下して筆者も未だ行ったことのない石廊崎灯台まで行ってみたい気もするが、この先の時間と明日の天候がどうなるかが読めないので次回以降の楽しみにした。
やがて下田市内に入り、今回筆者がどうしても立ち寄りたいと優先させてもらった本日のメインは伊豆急行下田駅前にある寝姿山ロープウエイに乗って下田港を展望することであった。寝姿山はその起伏から女性が横に寝ている姿に似ていることから命名されたようだ。標高200Mを僅か3分で山頂の展望台までを運んでいる。往復料金1,050.-を支払って山頂へいくとお土産店を通り抜けないと展望台に行けないので土産物を帰りに買うことになった。 ここでも曇天のため遥か彼方までは展望できないが眼下の下田港を見下ろすことができる。 幕末に黒船が来航して鎖国が解けた歴史的な場所は意外にも小さな港町であり、太平洋を横断してきた黒船の蒸気と爆音の迫力は当時の人にどのくらいの衝撃を与えたであろうか。 260年に及ぶ鎖国政策が平穏無事な世の中と引き換えに産業技術の振興を妨げたことにより西洋との格差を生み出し、後の明治維新による各地での戦乱を招き、その代償の上に現代の礎が築かれていることを忘れてはならないとこの場所に立って初めて思った。
10分ほど滞在したが、復路の下り便に店内から行列が溢れそうなので早々に切り上げた。片道切符で復路は歩いて降りることもできるらしいが、筆者らにそんな元気は既に無く、素直にロープウエイで戻ることにした。少し開けてある窓から満員のロープウエイ内に向かいの山から新緑の中を吹き抜けて入ってくる春の爽風がとても心地よく、筆者の好きな春の季節感を味わいながらリフレッシュできた。
ここの駐車場は駅前でもかなり広い駐車スペースがあり、バイクも問題ないので下田に立ち寄った際は是非お勧めしたいスポットである。今回初めての宿なので事前にHPでどのような立地であるか確認しているが、できるだけ早めにチェックインすることにした。
例によってここから宿まではカーナビ装着車の春日氏に先導してもらい下田駅前交差点を国道136号線に右折してすぐ県道119号線に右折すると後は道なりに5分程度で本日の 宿であるワンゲルハウスに到着した。オーナーの髭のマスターのコードーさんが出迎えてくれて向かい側のガレージに誘導してくれた。今日は13台停めるらしいのでここには最低でも6台は停めなければならないらしい。
早速館内を案内してもらうとロッジとういことで館内は山小屋調になっており、階段を挟んで二回はロフトになっている。県道側と反対側に双方各4台ベッドが並んでいるが仕切りはカーテンのみなのでこの構造では筆者のいびきで反対側の4名に迷惑をかけなければ良いがと頭によぎった。先にチェックインした我々にどちらでも好きな方にと言うので窓から外の様子が伺える道路側を迷わず選択した。
ここは自転車や徒歩(宿の横はバス停)での旅人も一人から歓迎してくれる“とほ宿”であるがマスターがバイク好きということで評判になり、当日もすべてライダーばかり13名だった。一階スペースにはナンバーは外してあるが、ホンダのRC30やナンバー付きの 水平対向エンジンの古いBMWら数台が展示されているが、どこまでがマスターの所有であるかは分からなかった。室内のオーディオ機器からもかなりのマニアであろうと感じられ常に音楽が流れていた。寝具も清潔感十分でこの大部屋の他にも2名用の個室が二部屋あるようなので女性やカップルも利用できる。各所にマスターの趣味が生かされている宿であることは間違いない。
荷物を下ろしたところで誰も到着していないうちに先にお風呂を頂くことにした。これもマスターの手作り感が一杯の露天風呂である。内風呂もあるが、今日は露天風呂でどうぞとのことだが、残念ながら温泉ではない。シャワーとボディーソープ、シャンプーはあるが、脱衣場は湯船のそばなので足が濡れたまま着衣しなければならないのが気になった。 手ぬぐいは脱衣場に用意されているが、バスタオル、歯ブラシは用意されていないので持参することが必要である。この辺は通常一泊一食(朝食)付で¥5,000.-、一泊二食付で¥6,500.-の価格設定なので止むを得まい。ホテルではないので昔のユースホステルよりワンランク上と言ったところであろう。最近は行っていないが北海道では最近“とほ宿”はかなり増えてきたらしい。風呂上りにビールでも飲みたいところだが、ここは自動販売機がおいていないのでアルコール類は基本的に持ち込み可であるマスターから最初に説明を受けたが、来るまでの途中にコンビニと言うか店もなかったので事前にリサーチ不足が露呈してしまい、後の祭りであった。ガレージの奥に整然と収納したバイクを再び出してあてもなく買い出しに行く気力もなく、持参していたペットボトルの水で諦めた。 暫しベッドで横になり寛いでいると数台バイクが到着した。どうも向かい側に宿泊する方たちのようでロフトに上がって来たので互い挨拶をした。関西から遥々下田まで来たことは関西弁であることから察しはついた。